魅力的でにぎやかな港まちに集う

イベントレポート

泉太郎「とんぼ」


  インスタレーションと、1万5千字のテキストが関係しあう



 アーティスト・泉太郎さんによる新作インスタレーションを展示しました。たくさんの人の気配が漂う展示室には、多数の人型パネルや壁、映像の流れるモニター、壁を叩く映像と音、小型ロボット掃除機を組み合わせた音を出す立体、iPhoneのような黒いオブジェクトなど、さまざまなものが配置されたインスタレーション作品が。展示室に足を踏み入れると、さまざまな方向から聞こえてくる騒々しい音と、照明が薄暗く設定された空間に立つ人型パネルに驚く人が少なくなかったようです。

 そして展覧会を構成する一部であり、作品同士を繋げる役割も担う展覧会のチラシの裏面には、泉さんによる1万5千字を超えるテキストが綴られました。2019年の春から始まり、断片的に季節を跨ぎながら約一年に渡り展覧会に向けて構想した過程を覗くことができます。テキストの掲載されたチラシを広げて光にかざしてみると、表と裏に印刷された形や色が反転するような仕組みで、作品を象徴するかのようなデザインとなりました。

 



  体感によって生まれる疑問や発見



 本展は、2019年秋に名古屋芸術大学で開催された泉さんの個展「スロースターター バイ セルフガイダンス」と連続性のある個展で、作品に、「表と裏」「存在と不在」「待機と稼働」など対立する構造を取り入れながらも、それだけではない要素によって、二項対立から脱出する試みがなされていました。それは一見、無意味で不条理に思われる表現を含みながらも、対立による「わかりやすさ」や「分断」を生み出す現代社会や私たちの思考への問いかけでもありました。

 会期中には、旧税関寮1、2階を使用した泉さんによるツアー形式の参加型イベントを行いました。チラシの裏のテキストを読み解いたり、港まちにあるシャッターが降りた建物の内側を想像したり、コップを相手にトークショーを行うなど、「とんぼ」の要素を多く含んだイベントは、作品を読み解くヒントにもなる面白いイベントとなりました。

 

 



開催概要

△: 魅力的でにぎやかな港まちに集う (2)アート&音楽を活用したまちづくり
泉太郎「とんぼ」

会期|令和2年1月25日(土)~3月14日(土) (36日間) 1331人
会場|港まちポットラックビル3F
出展アーティスト|泉太郎
企画|Minatomachi Art Table, Nagoya [MAT, Nagoya]
協力|アッセンブリッジ・ナゴヤ実行委員会、TakeNinagawa、名古屋芸術大学
撮影|冨田了平
写真提供|Minatomachi Art Table, Nagoya [MAT, Nagoya]

  WEBページ
 
泉太郎「とんぼ」

  チラシPDF
表面

裏面